社会保障担保のために「消費税論議を」−09年回顧と10年の展望 日本医師会・竹嶋康弘副会長(医療介護CBニュース)

 2009年は日本医師会にとって激動の一年だったに違いない。8月の衆院選では、日医の政治団体である日本医師連盟が長年にわたって支持政党としてきた自民党が大敗。日医が政権与党となった民主党とのかかわり方を模索する中、診療報酬改定について議論する中央社会保険医療協議会(中医協)の人事では、従来3人だった日医の執行部枠がなくなった。日医は09年をどう振り返り、10年をどう展望するのか-。来年度の診療報酬改定への要望なども併せて、副会長の竹嶋康弘さんに話を聞いた。

■政権どちらでも「是々非々」で対応
―09年の大きな出来事である「政権交代」をどう見ますか。
 これまで社会保障費は機械的に削減されてきましたが、前政権の「社会保障国民会議」は、社会保障を「持続」するのではなく、「機能強化」するとの報告書をまとめました。われわれは大いに期待しました。今年度補正予算では、地域医療再生基金が盛り込まれ、各都道府県が医療活性化の準備を始めました。そのため、「もし政権が代われば、それが中座するのではないか」との心配が当初からあったことは事実です。
 一方、新政権は先の衆院選のマニフェスト(政権公約)を重視し、これまでいろいろやってきていると思います。マニフェストには、医療などに税金を集中的に使うと具体的に書かれていたので、疲弊した地域医療関係者は大きな期待を寄せていました。また、民主党政策集の中には2つ大きな公約があります。一つは、医師数を1.5倍にすること。もう一つは、総医療費対GDP比をOECD加盟国平均まで引き上げることです。ただ、これには財源が必要です。本当にやるとしたら、9兆-10兆円は掛かります。「国債を発行しない」「消費税を上げない」となった場合、今ある財源から何とか削って回さないとできません。既に地域医療再生基金は750億円切られました。その影響は大きいと思います。その点では、中長期的な社会保障を担保する財源についてきちんと論じていただかなくてはなりません。新政権は「4年間、このままでいく」と言っていますが、4年間を何とか食いつないでいくのでは困ります。この間に、日本の社会保障である医療、教育、保育などをどう担保していくか、高齢者の方々が安心できる社会をどうつくっていくかを考える必要があります。日本の将来のためには、政府は勇気を持って、国民から広く財を集める努力をしてほしいと思います。
 政権が代わっても、生命の基盤である医療は、誰もがいつでも受けられるよう、きちんと継続していかなければなりません。国民皆保険制度の下、国民が受けられる医療の恩恵を減じるのではなく、新政権にはこれをさらに推し進めてほしいと思っています。

―先の衆院選では、茨城県医師連盟が民主党支持を表明しました。どのように受け止めていますか。
 47都道府県の医師連盟のうち、明確に民主党を支持したのは茨城県だけでした。騒ぐようなことではありません。各地域にはいろいろな事情があるので、そういう姿勢を取らざるを得なかったのだと思います。原中勝征・茨城県医師会長の場合は後期高齢者医療制度です。「お年寄りをいじめるような後期高齢者医療制度は間違いだ。これを進める自民党には反対だ」という主張は非常に分かりやすく、これも間違いではないと思います。民主党支持を表明したから「けしからん」と言う気は全くありません。わが国の医療制度に対していろいろな意見が出るのは当たり前です。日医としてはそのあたりをしっかりつかんでいかなければいけないと思います。

―結果、民主党が圧勝しました。
 国民の選択です。医師会としての判断を組織として行う場合、47(都道府県)の例えば半分が民主党支持だったら判断が付きますが、どれくらいの医師がどこに投票したかは分かりません。当時、日医ではさまざまな要因から、あくまで自民党を支持していました。

―日本医師連盟は自民党支持を撤回しました。政権与党である民主党とのかかわり方はどうなるのでしょうか。
 とにかく日医は社会保障全体を考えます。その点では、民主党がマニフェストに掲げた「ひとつひとつの生命を大切にする」「暮らしのための政治」を評価します。特に医療はわれわれの分野であり、介護、そして未来につながる教育も一緒にやっていかなければならないと思います。
 命を救って、その命が永らえていくこと―。その大切さはどんな政権に代わっても変わりません。日医のスタンスは政権がどちらになっても変わることなく、「是々非々」で対応していきます。ただ、どんなにいい政策を作っても、実現しなければ何にもならないので、政権与党に対しては当然、積極的に提言をしていきます。

―中医協の人事では、「日医外し」が取りざたされました。
 「日医は開業医の団体であり、中医協ではその利害を代表している」と政権与党の皆さんは考えて、われわれを委員から外しました。しかしこれは全くの誤解です。事実を分かっていません。また、国民を預かって動かしていく政権が、いつまでもそのような姿勢は取らないだろうと思っています。地域医療を現場でしっかり支えている病院や診療所の声を集約し、分析し、政策を作る。それらを政府に上げていくのが日医です。そのような団体はほかになく、行政も日医のデータを信頼しています。われわれのデータは、都道府県レベルから郡市区医師会レベルまで、その現場の状況を集約できます。厚生労働省が霞が関で作る資料とそれをしっかり対峙させ、有識者の皆さんが判断すればいいと思います。日医は何かしら圧力団体みたいに見られていますが、そんなことはありません。データを基に議論すれば、必ず通ずると思います。
 民主党の医系議員は、地域医療の現場をある程度理解されています。その方たちによって、日本の医療をどうすればよいか中長期的な展望が開ければ、それにわれわれも新しい視点で参画させていただけたらと願っています。おそらく民主党は、いつまでも(日医が参加することが)駄目とは言わないでしょう。

■次期診療報酬改定「連携できる手当てを」
―次期診療報酬改定に向けた中医協の議論をどう見ますか。
 会員や有識者から上がっている心配は、中医協から日医が外れて今まで出していたような資料がなく、個人がデータを出している点です。ご自分の経験や知識でお話することも非常に大事ですが、厚労省や財務省が作った案をどうするかが前提になってしまいます。日医からの資料は今、委員である安達秀樹・京都府医師会副会長がきちんと説明してくださっています。ただ、誇示して資料を出すのではありません。あくまで議論を尽くして、最後は公益側に委ねる。そのためのエビデンスは出すということです。

―次期診療報酬改定で要望することは何でしょうか。
 08年の診療報酬改定でお願いしたのは、救急病院をはじめ、医師不足で疲弊している小児科や産婦人科に財源を付けることでした。ところが、そこにもきちんと回らず、当然ながら中小病院(亜急性期病院)の受け皿にも何も回らなかった。また、診療所から病院に財源を移譲しなければなりませんでした。救急、産科、小児科にはさらなる財源支援を、そして受け皿となる中小病院や有床診療所、無床診療所が互いに連携できるような診療報酬の手当てを今度こそ期待します。

―新型インフルエンザ発生を受けて、現場からはどのような声が上がりましたか。
 ワクチンの供給量や接種回数などが急に変わったことで、現場はとても困りました。ちゃんとした司令塔がどこにあるのか分からなかったのです。情報の取り扱いはもう少し慎重にしていただかないといけません。診療所などで患者を診る時に、他の患者にどのように対応するかも問題になりました。一方、小児科や内科など(感染患者が多く来るところ)で働く職員に対するワクチン接種はきちんとしてくれましたね。
 日本はもともと公衆衛生が発達しており、生活環境は恵まれています。米国やメキシコで死者が多かったのは、保険に入っていない人がたくさんいて、早期に受診できなかった背景があります。日本では、まだ症状が軽いうちに、少し具合が悪くなったらすぐ外来を受診できます。これは非常にありがたいことです。ただ、日本の外来窓口負担はG7で一番高いとされています。早く受診して早く治るから重篤化が防げているので、今後負担を上げないためにも、財源をしっかり担保する必要があります。勇気を出して社会保障に目的化した消費税論議をしてほしいです。

■社会保障で「国を興す」ために
―ずばり、「10年の展望」をお聞かせください。
 医療分野については、われわれが責任を持って提言していきます。同時に、社会保障全体をいろいろな分野の方々と一緒にやっていけるのではないかと思います。高齢者がますます増える中、大事になってくるのは「人」であり、「人を大切にする」社会をつくることです。医療や介護が雇用創出につながることは定説となりました。雇用不安などなく、若者が伸び伸びと活動できる社会にする。そのような視点から発展させていけば、温かい日本ができてくるのではないかと思います。
 また、最先端の医療も必要で、今、日医は日本医学会と手をつないでやっています。日本医学会の中で最先端の医学医術をどんどん開発してほしいと思っていますし、それに対して国には当然財源を出してもらわないといけません。もう一つは地域医療です。その進んだ医術を国民が享受できなければなりません。地域医療主体の日医と、医学医術の革新を担う日本医学会は、しっかり協力し合ってやっていきます。
 その中から出てくるのは、勤務医の先生方がご発言する場がないという問題です。ご発言いただけるような場を医師会でできるだけつくっていくことも今年の抱負です。現在は、各都道府県から代議員としてできるだけ勤務医の先生方を選んでいただき、特に若い先生方にご発言いただく機会をつくっていただくようお願いしています。
 そして、病院や診療所が互いに補完し合えるようにする医療機能の分担と連携の仕組みを早くつくっていく必要があります。それぞれ特徴があり、同じようにはできません。現状では、病院が外来を診なければ経営が成り立たない。本来は、病院勤務医が働きやすいように、外来を診ないで済むようにしていかなければいけません。しかし、これまでは医療費があまりにも低過ぎてそれができませんでした。政権も代わりましたし、思い切って次の10年、20年先を見据えて日本の医療を変えるための政策をしっかり作ってほしいと期待しています。未来への投資である社会保障によって「国を興す」ために、日医は医療の問題に限らず、教育なども含めて政策を提言していきます。


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by vmrdbh0li5 | 2010-01-06 13:36
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